【妊娠と食事】カフェイン

妊活中・妊娠中の女性へのカフェインの影響をご存知ですか?

カフェインはコーヒーや栄養ドリンクなどに含まれ、妊娠中の女性の摂取によって胎児に影響することが知られています。特に過剰摂取を避ける必要があると言われています。この記事では、具体的な摂取量、許容量、胎児への影響、その理由について紹介します。カフェインの摂取量が気になる方は必見です。

カフェインと薬理作用

化学構造と類似物質

カフェインはアルカロイドという化合物の仲間です。プリン環を持ったキサンチンと類似した構造を持った有機化合物の1つとして知られ、その構造はDNAの構成成分の1種であるアデノシンの一部の化学構造であるアデニンと非常に類似した構造をしています(下図)。

アデニンの化学構造
カフェインの化学構造

アデニン(左)、カフェイン(右)

 

 

カフェインの興奮作用

カフェインは摂取後約30分で吸収されて血流に乗り全身にいきわたります。この時、カフェインは血液 - 脳関門、胎盤関門、血液 - 睾丸関門、乳腺関門を容易に通過します。(*ref: Weathersbee and Lodge, 1977; Arnaud, 1993)

 

脳では通常、アデノシンが、アデノシン受容体と結合することによって、神経終末から放出されるドーパミン、ノルアドレナリン、グルタミン酸といった興奮性の神経伝達物質の放出を抑制し、神経活動は安定化されます。(アデノシンは抑制性神経伝達物質)

 

 

前述したように、カフェインはアデノシンと類似した構造を持ち、脳関門も容易に通過します。そのためカフェインは、アデノシンの受容体結合を遮断してしまうアンタゴニスト(受容体遮断)として機能し、抑制を抑えるので、間接的に脳を興奮、覚醒させます。

 

カフェインの利尿作用

脳にあるアデノシン受容体とはタイプの異なるアデノシン受容体が腎臓にもあります。

カフェインが、腎臓のアデノシン受容体へのアデノシンの結合を遮断すると、尿細管再吸収の抑制が起こるとされており、これにより利尿効果が出るとされています。(ref. Rieg et al., 2005)

 

 

カフェインのその他の作用

カフェインは人体に対して、様々な作用を示すことが知られています。

 

参考文献:栗原 久,東京福祉大学・大学院紀要 第6巻 第2号,pp109-125 (2016,3)

 

<不眠や不安>

個人差はあるが、100 mg未満のカフェインの摂取は、大きな影響を及ぼさないとされているが、100 mg以上の摂取は睡眠時間の短縮を起こすことが知られている(Landolt et al., 1995)。

400~500 mg 以上のカフェインは、健常者でも不安を誘発することが知られている(Nawrotetal.,2003;ChildsanddeWit,2006)。

 

<疲労感>

運動中の疲労感に関する自己評価の調査では、カフェイン(4~10 mg/kg)の1時間前摂取により、疲労感が減退するとの報告がある(Doherty and Smith(2005))。一方、カフェイン摂取の中断により、疲労感が上昇することも認めた。

 

<血圧上昇>

健常人が200~250 mg(コーヒーで2~3 杯に相当)を摂取すると、収縮期血圧が 3~14 mmHg、拡張期血圧が4~13 mmHg上昇するとの報告がある(Nurminen et al.(1999))。カフェインの昇圧効果は、高齢者、カフェイン離脱中の者、身体的・ 精神的ストレス状態、高血圧者において顕著。

妊婦にとってのカフェイン

カフェインを含む食品の過剰摂取には注意が必要です。国際機関の示す目安は以下の通りです。

食品からのカフェインの摂取に関しては、国際機関などにおいて注意喚起等がなされています。例えば、世界保健機関(WHO)は、2001年にカフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、お茶、ココア、コーラタイプの飲料はほぼ同程度のカフェインを含んでおり、またコーヒーはその約2倍のカフェインを含んでいることから、妊婦に対し、コーヒーを1日3から4杯までにすることを呼びかけています。また、英国食品基準庁(FSA)では、2008年に妊婦がカフェインを取り過ぎることにより、出生時が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとして、妊娠した女性に対して、1日当たりのカフェイン摂取量を、WHOよりも厳しい200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するよう求めています。

妊娠している女性のカフェイン摂取量は、200mg以下に抑えるべき(コーヒー2杯程度)

 

 

【妊婦に対しての影響】

諸説ありますが、カフェインの妊婦への影響を以下に列挙します。

  • カフェインは胎盤を通じて胎児に送られる
  • 妊娠中に摂取されたカフェインは胎盤の血流速度を低下させる可能性が示唆されている
  • 早産や発育不全、流産などの原因になるとも言われている
  • 胎児の肝臓は未成熟なため、カフェインは排泄されることなく胎児に蓄積されてしまう
  • カフェインはタバコやお酒と同様に胎児の成長の妨げとなる
  • 乳幼児突然死症候群のリスクも高まるという研究報告もある
  • 妊婦の身体はカフェインの分解・排出のスピードは妊娠前と比べ1/3程度まで低下してしまっているため、胎児だけでなく、母体にも蓄積されやすくなると言われている

 

 

カフェインを含む飲料

カフェインは、胎盤を通って胎児に到達し、胎児に悪影響を及ぼす可能性が高いので、妊婦の摂取は控えるべきですが、どうしても我慢できない場合は、前述のように英国食品基準庁(FSA)の定める基準値である200 mgを意識して摂取するしかありません。

そこで、各飲料にどれほどのカフェインが含まれているかについて下表にまとめます。製品によっては、カフェインが多く含まれるものもあるので、下表の数値は参考程度に捉えてください。

食品カフェイン含有量

インスタントコーヒー

80 mg/1杯

コーヒー

60 mg/100 mL

紅茶

30 mg/100 mL

せん茶

20 mg/100 mL

ほうじ茶

20 mg/100 mL

ウーロン茶

20 mg/100 mL

玄米茶

10 mg/100 mL

玉露

160 mg/100 mL

エナジードリンク(清涼飲料水)

32~300 mg/100 ml(※表示を参照)

コーラ

50 mg/500 mL

抹茶

48 mg/1杯=抹茶 1.5 g

ダークチョコレート

50 mg/100 g

麦茶・黒豆茶・ルイボスティー

0 mg/100 mL

まとめ

妊婦のカフェイン摂取は、お腹の中の赤ちゃんに悪影響を及ぼしかねないので、極力は摂取しないことが重要ですが、どうしても辞められない人は、上表の含有量を参考に200 mg/日以下となるように摂取してください。

個別具体的な製品のカフェイン含有量は、それぞれメーカーのホームページで調査して調べることをお勧めします。



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