
妊活中・妊娠中の女性の魚介類の摂取がもたらす影響をご存知ですか?
魚介類の中には、有毒な有機水銀を多く含むものがいます。これらの魚介類を大量摂取すると、胎児の発育に悪影響が出ます。この記事では、魚介類に含まれる水銀のもたらす胎児への影響についてまとめて紹介します。魚好きの方は、どの魚をどの程度食べるとダメなのか注意して読んでください。
有毒な水銀
水銀、特に有機水銀(メチル水銀)は、日本で起きた水俣病(熊本県八代海)や、阿賀野川流域(新潟県)での工場排水に起因する有機水銀中毒(第二水俣病)の原因物質である。体の中に入ったメチル水銀は、主に脳や神経を侵し、手足のしびれ、ふるえ、脱力、耳鳴り、見える範囲が狭くなる、耳が聞こえにくい、言葉がはっきりしない、動きがぎこちなくなる、などの症状が起こります。
水銀の生物濃縮
ヒトの体内への侵入
有毒だとわかっていながらヒトが有機水銀(メチル水銀)を摂取してしまうのは、食物連鎖の頂点が人間であるためです。ヒトの体内に蓄積しているメチル水銀のおよそ85%は,魚介類に由来するとされています。ヒトの体内に取り込まれたメチル水銀の大半は、肝臓・腎臓に高く蓄積し、一部は脳に移行することも確認されています。
通常であれば、脳は血液脳関門というバリアによって有害物質を取込まない構造になっていますが、メチル水銀は血液中でシステインとの複合体を形成し、メチオニンとの類似立体構造をとります。そして、アミノ酸輸送体を介して容易に脳組織に移行することが確認されています。
体内に取込まれたメチル水銀は決して蓄積する一方ではなく、少しずつ便や尿へと排出され、ヒトにおける生物学的半減期は一般に50~70日といわれています。
ちなみに、毛髪には多くのシステインが含まれ、水銀はほぼ一定の割合で毛髪中に排泄されるため、毛髪中の水銀量を調べることで、血中のメチル水銀の濃度や体内蓄積量を推定することができます。
胎児と水銀
成人では、通常の魚介類の摂取量ではメチル水銀による健康影響は考えられません。
しかしながら、胎児は、①胎盤からのメチル水銀の移行が容易であること、②胎児の脳の発達時期にメチル水銀に対する感受性が高くなることなどの理由で、妊娠している方は水銀値の高い魚介類は避ける必要があります。
水銀を多く含む魚介類
- マグロ類: クロマグロ(本マグロ)、ミナミマグロ(インドマグロ)、メバチ(メバチマグロ)、クロカジキ、メカジキ、マカジキなど
- サメ類: ヨシキリザメ、ドチザメなど
- 深海魚類等: キンメダイ、ムツ、ウスメバル、ユメカサゴ、メヌケなど
- 鯨類: バンドウイルカ、コビレゴンドウ 、マッコウクジラ、ツチクジラ、イシイルカなど
水銀の摂取量の基準
- 例1)刺身1人前(80 g) + キダイの焼物1切れ(80 g)
- 例2)マカジキの刺身1人前(80 g) + キダイの焼物1切れ(40 g)
- 例3)本マグロの刺身1人前(80 g)
- 例4)クロムツの焼物1切れ(80 g) + マカジキの刺身1人前(80 g)