不妊の原因である高プロラクチン血症の根本的原因と治療方法

異常に月経周期が長かったり、基礎体温変化がはっきりせず、排卵してる様子がない時ってありませんか?

もしかしたら、それはプロラクチンの分泌量が多いことが原因かもしれません。

実は、そんなに珍しくない疾患なので、不妊を疑っている人は詳しく知る必要があります。

【この記事から分かること】
・高プロラクチン血症の特徴と原因
・プロラクチン値が高くなりやすい薬
・原因別の治療方法
・甲状腺ホルモンとの関係

妊娠前の女性のプロラクチン値が高いと、卵巣抑制が働き、排卵障害や無月経などの不妊の原因となることがあります。

プロラクチンとは

・脳視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が、脳下垂体前葉に作用して分泌されるホルモン
・乳腺を刺激して乳汁の分泌を促進
・主に妊娠後の授乳期に分泌される
・血中プロラクチン値の基準値
成人男性4.29~13.69 ng/mL
成人女性4.91~29.32 ng/mL
・通常時でも、微量が分泌されており、日内変動もある
・主に夜間の分泌量が多く、食事,運動,ストレスで上昇する
・分泌促進因子: TRH
・分泌抑制因子: ドパミン
・以下の図は、各ホルモンがどこから分泌されるかを示しています。
代表的なホルモン

 

 

 

基準値については色々あるみたいでしたが、一般的に、女性で血中プロラクチン量が30 ng/mLを超えると、「高プロラクチン血症」というようです。

プロラクチンの分泌は、通常、
分泌促進のTRH(例えるなら、車のアクセルのようなもの)
分泌抑制のドパミン(例えるなら、車のブレーキのようなもの)
によって制御されている。
普段(妊娠前の状態)は、ドパミンによってプロラクチン分泌量が少なく抑えられています。
しかし、「高プロラクチン血症」の女性の場合は、妊娠前であっても、”何らかの原因”により、プロラクチンの分泌量が多い状態です。
プロラクチン分泌量が多くなる原因は以下の通り。
  • 腫瘍(プロラクチノーマ): 下垂体にできるプロラクチンを産生する腫瘍
  • 薬剤性高プロラクチン血症: ドパミンをブロックする睡眠薬や精神神経薬、胃腸薬を服用する事でドパミンのプロラクチン分泌抑制機能が働かず、プロラクチン値が増加する
  • 甲状腺機能低下症: 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が増え、プロラクチンの分泌量が増える
  • ストレス
  • 原因不明
ちなみに、薬剤性高プロラクチン血症の原因となりうる薬剤の例は以下の通りです。不妊に悩んでいる方で、これらの薬を服用している方は、すぐに病院に行って医師と相談しましょう。
高プロラクチン血症を起こしやすい薬
1. フェノチアジン系;クロルプロマジン(ウインタミン®,コントミン®)、レボメプロマジン(ヒルナミン®)、チオリダジン(メレリル®)、ペルフェナジン(トリラホン®)
2. ブチロフェノン系;ハロペリドール(セレネース®)
3. 三環系抗うつ剤;イミプラミン(トフラニール®)
4. ベンズアミド系;スルピリド(ドグマチール®) 、メトクロプラミド(プリンペラン®)
5. セロトニン・ドーパミン受容体遮断薬; リスペリドン(リスパダール®)、パリペリドン(インヴェガ®);高プロラクチン血症おこし易い
※ペロスピロン(ルーラン);高プロラクチン血症が少ない
以上のような原因が特定できれば、
適切な治療や薬剤服用により、
正常な血中プロラクチン濃度を取り戻すことができ、
排卵などの卵巣機能を正常に戻すことができ、
不妊の問題が解消することができるかもしれません。
しかし残念ながら、高プロラクチン血症の中には、特定が困難なものがあります。
潜在性高プロラクチン血症
そもそも、高プロラクチン血症は2つのタイプに分けることができます。
  • 普通の高プロラクチン血症: 普段から血中プロラクチン濃度が高い
  • 潜在性高プロラクチン血症: 普段は低い値だが、夜間やストレスを感じた時などに急増する
「潜在性高プロラクチン血症」の厄介な点は、発覚しにくい点だと思います。
なぜなら、
・普段の数値は低いため、そもそも通常の血液検査ではわからない
・高くなるとしても、夜間なので、検査を受けるのが難しい

潜在性高プロラクチン血症とは

そもそも、プロラクチン分泌量には”日内変動”があり、昼間に低く、夜間に高い傾向がある。
”潜在性高プロラクチン血症”は、昼間のプロラクチン値が普通でありながら、夜間の数値が基準値を大幅に超えるほど高値な人を指します。
プロラクチン分泌量が多いということは、排卵障害や無月経を起こしてしまい、”不妊”となってしまう場合があります。
昼間の数値には異常が見つかりにくいので、発覚しにくい。
だから、排卵障害や無月経、その他の特徴的な症状をもとに、適切な検査方法を選択する必要があります。

潜在性高プロラクチン血症か否かの検査方法

検査
通常、プロラクチンの数値は、夜間に高くなる傾向があるみたいです。
つまり、夜間のプロラクチン値がある基準値より高い場合に、「潜在性高プロラクチン血症」ということになります。
ただ、夜間に病院に行って血液検査を受けるのは非現実的です。
夜間に検査をすれば必ず数値が高くなる訳でもありません。(まさに、潜在性です…)
そこで、潜在性プロラクチン血症を疑うと行われている検査方法は、「TRH負荷試験」というものです。
前述しましたが、TRHは、プロラクチン分泌におけるアクセル(分泌促進)の役割を担うホルモンです。
”TRH負荷試験”とは、脳内で分泌されるTRHが、プロラクチン分泌量が増やす原理を利用した検査です。
詳しくいえば、
TRHを体内に注射してプロラクチンの分泌を促進することで、身体を夜間と同じ状態にする
というのがポイントです。
具体的な検査内容としては、
TRHを注射後、15・30・60分後に採血をしてプロラクチン濃度を測定します。
このように測定して得られた結果(身体を無理やり”夜間状態”にして検査したプロラクチン濃度の値)が、昼間の数値に比べて急激に上昇していれば、潜在的にプロラクチン血症だったという結論になります。
※いきなりクリニックや病院を受診するのに抵抗がある人は、まず毎日の基礎体温測定と排卵日の確認を行なってみると良いかもしてません。

私たち夫婦の場合は、日々の基礎体温をまとめたグラフや排卵検査薬などの利用によって、明らかな月経不順を確認することができています。普通の生活をしていても、不規則な月経周期が見られるようであれば、早めにクリニックで検査した方がいいですよ!

治療方法は原因によって異なる

治療方法
前述したように、高プロラクチン状態には様々な原因があり、具体的な治療方法は、その原因によって異なります。
しかし、高プロラクチン血症であることが判明すれば、治療方針はある程度決まります。
大まかな治療の流れは、次の優先順位に基づいて行われます。
1)プロラクチン値を下げること
2)卵巣機能の回復や治療
1)のプロラクチン値を下げるために行う治療法は、以下の通りです。

例えば

①腫瘍が原因の場合

 薬物治療もしくは腫瘍の摘出手術により、プロラクチン値を下げることができる。

 

②薬剤性高プロラクチン血症が原因の場合

原因である薬剤の服用を中止すれば、プロラクチン値は低下するはずです。
しかし難しいのは、これらの服用薬剤は、うつ病や精神疾患の治療に用いられる薬剤であり、服用を中止すると精神状態(病状)が悪化してしまいます。
そこで、服用薬剤を、ドーパミンに作用しにくい薬剤に変更することが第一選択となるはずです。
③甲状腺機能低下が原因の場合
甲状腺ホルモン剤を投与する。
ここで、高プロラクチン血症の治療に用いられる薬を具体的に挙げていきます。
  • ブロモクリプチン(パーロデル®)
  • テルグリド(テルロン®)
  • カベルゴリン(カバサール®)
これらの薬剤は、プロラクチンの分泌を抑制するホルモンであるドパミンを作動させる薬剤です。
しかし、これらの薬剤には、「悪心、嘔吐、胃十二指腸潰瘍、幻覚など」の副作用があるようなので、少量の服用ではじめて様子を見るようになるのだろうと思います。
ちなみに、副作用の強さは以下の順のようです。
ブロモクリプチ > テルグリド > カベルゴリン

甲状腺ホルモンと高プロラクチン血症の関係

試験
前述したように、プロラクチンは、脳の視床下部から分泌される”TRH”の作用によって、脳下垂体から分泌されるホルモンです。通常であれば同時に、ドパミンというホルモンによってプロラクチン分泌が抑制されて、分泌量が制御されています。

”プロラクチン”の分泌量が多いと言うことは、つまり、

「”プロラクチン”の分泌を促す”TRH”の分泌がドパミンより盛んであること

を指します。

”TRH”とは、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンに略なのですが、名前の通り、TRHは本来、”甲状腺刺激ホルモン(TSH)”を産生・分泌されるホルモンです。(むしろ、こっちがメインの役割)
”甲状腺刺激ホルモン(TSH)”の役割は、甲状腺から”甲状腺ホルモン”を分泌させることです。

甲状腺ホルモンの役割

・基礎代謝率の上昇:  熱産生
・体の発育: 成長・成熟
・脳の活性化: 自律神経
・糖吸収: 糖の代謝
・脂肪分解: 脂質代謝
・細胞機能調節: タンパク質代謝
甲状腺ホルモンは、上記の通り、体の様々な活動の重要な役割を果たしており、多すぎても少なすぎても良くないので、体の中では一定に保つように制御されています。
甲状腺機能に異常があれば、以下のような病気と関連があります。
  • 甲状腺ホルモンが多い → バセドウ病、プランマー病、頻脈・動悸・息切れetc.
  • 甲状腺ホルモンが少ない → 橋本病、クレチン病、甲状腺ホルモン不応症etc
例①
甲状腺機能低下症”のように、甲状腺ホルモンの分泌量が減少している場合、不足している甲状腺ホルモンを放出させるように”TRH”を分泌します。
”TRH”の作用によって、TSHが分泌されて甲状腺ホルモンの分泌を促すことにつながりますが、同時に”プロラクチン”までも分泌されてしまいます。これが、高プロラクチン血症の原因となってしまいます。
例②
”甲状腺ホルモン”が分泌されるタイミングは、身近な例で言うと、「頑張る」時です。例えば、「受験が近い」、「誰かと喧嘩した」、「引越しする」、「電車に乗り遅れた」など些細なことでも、甲状腺ホルモンが分泌されます。
と言うことは、”甲状腺ホルモン”の分泌を促進する”TSH”の分泌を促進する”TRH”が分泌される訳です。
つまり頑張る人は、”TRH”の分泌により、”プロラクチン”が盛んに分泌されてしまい、高プロラクチン血症の原因となってしまいます。「頑張る」の中には、「妊活を頑張る」などのような意気込みも含まれてしまうと、少し厄介なことに、妊娠しにくくなってしまうと言うことです。

まとめ

不妊の原因の一つとして知られる「高プロラクチン血症」について詳しくまとめました。
高プロラクチン血症は、プロラクチン分泌量が多くなって無排卵や排卵障害が起こり、結果的に不妊の原因となってしまいます。血液検査で見つかればラッキーですが、通常の検査では見つかりにくい「潜在性高プロラクチン血症」は、厄介です。
原因としては、甲状腺ホルモンの分泌が影響している場合や、腫瘍が関係している場合、ホルモン分泌異常のような原因不明の場合など、様々な要因が考えられます。そして原因毎に治療法も異なります。
多くの場合は薬剤で治療が可能ですが、最悪の場合は手術が必要となる時もあります。まずは、自分自身の身体の状態を正確に把握するところから始めるのが一番ですね。
auf wiedersehen



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