
不妊治療に掛かる治療費の一部は、都道府県・区市町村から助成されることをご存知ですか?
本記事では、助成金の種類と申請方法、申請の条件について解説します。
不妊症を疑っている人、不妊症と診断された人たちにとって、不妊治療の費用は気がかりな点だと思います。不妊治療が長期化すると、治療費支出も大きく膨らんできます。中には、治療費負担が重過ぎて治療を断念する方や、そもそも治療をスタートできない人、先延ばしにしている人もいると思います。
本記事では、不妊治療費用に対する国・地方自治体からの助成金と、その対象者、仕組みについて紹介したいと思います。
目次(ジャンプできます)
治療の種類
- 一般不妊治療: 例)不妊の検査、タイミング法・薬物療法・人工授精
- 特定不妊治療: 例)顕微授精、体外受精
公的助成事業の種類
- 国の事業に基づく都道府県の助成金
- 区市町村が独自に行う上乗せ助成金
助成金の種類と全体のイメージ

注意!
①国の事業に基づく都道府県の助成金
基本情報
- 名称: 不妊に悩む方への特定治療支援事業
- 内容: 国が実施する『不妊に悩む方への特定治療支援事業』に基づき、都道府県、指定都市、中核市が実施主体となり運営
- 実施主体: 都道府県、指定都市、中核市
- 指定医療機関: 事業実施主体が指定する医療機関
- 対象治療: 特定不妊治療(顕微授精、体外受精)
細かいことですが、助成金を出す側(国と自治体)の負担割合は国が50%、都道府県・指定都市・中核市が50%のようです。
助成を受けるための条件
助成を受けることができる人にはいくつかの満たすべき条件があります。
下記の3つ全てを満たす必要があります。(国の事業)
条件1 | 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦 |
条件2 | 特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に判断された法律上の婚姻をしている夫婦であること |
条件3 | 夫婦の総所得が730万円まで(夫婦合算の所得ベース) |
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注意!
年間所得の計算方法
- 1〜5月に申請: 前々年の夫婦の所得
- 6〜12月に申請: 前年の夫婦の所得
計算式
計算式
年間所得の具体例

計算例
3,714,800円 = 4,064,800円-80,000円-270,000円
治療の種類と助成金額
治療ステージ/治療内容 | 特定不妊治療 | ※ 男性不妊治療 | |
A | 新鮮胚移植を実施 | 15万円 (初回30万円) | 15万円 (初回30万円) |
B | 凍結胚移植を実施 | 15万円 (初回30万円) | 15万円 (初回30万円) |
C | 以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施 | 7.5万円 | 非該当 |
D | 体調不良等により移植のめどが立たず治療終了 | 15万円 (初回30万円) | 15万円 (初回30万円) |
E | 受精できず、又は、胚の分割停止、変性、多精子授精などの異常授精等により中止 | 15万円 (初回30万円) | 15万円 (初回30万円) |
F | 採卵したが卵が得られない、又は状態のよい卵が得られないため中止 | 7.5万円 | 15万円 (初回30万円) |
G | 卵胞が発育しない、又は排卵終了のため中止 | 対象外 | 対象外 |
H | 採卵準備中、体調不良等により治療中止 | 対象外 | 対象外 |
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注意!
治療ステージ | 東京都 | 和歌山県 |
A | 20万円(初回30万円) | 25万円(初回30万円) |
B | 25万円(初回30万円) | 25万円(初回30万円) |
C | 7.5万円 | 12.5万円 |
D | 15万円(初回30万円) | 25万円(初回30万円) |
E | 15万円(初回30万円) | 25万円(初回30万円) |
F | 7.5万円 | 12.5万円 |
治療回数の定義
1回の治療とは
1回の治療とは、採卵の準備から始まり、最終的にその治療周期の妊娠判定検査までの一連の治療のことを指します。
例えば、
採卵準備→ 採卵→ (採精)→ 体外受精→ (胚凍結)胚移植→ 妊娠確認検査
申請期限
- 治療終了日から(治療終了日を含めて)60日以内
- 治療が終了(1回の治療のこと)した日の属する年度内(4月1日から3月31日まで)
申請方法
- 申請書: 各自治体もしくは治療を受けた医療機関でもらえる
- 受診等証明書: 治療を受けた指定医療機関でもらえる
- 領収書コピー: 治療費(保険外)の領収書のコピー
- 住民票: 夫と妻の住民票
- 戸籍謄本
- 口座情報: 口座番号や支店名、通帳の写しなど
助成限度回数
また、助成を受けることができる回数にも年齢によって制限があります。
初めて助成を受けた際の治療期間初日の妻の年齢 | 通算助成回数 |
40歳以上 | 3回 |
40歳未満 | 6回 |
平成27以前に助成を受けたことがある人 | ※要確認 |
②区市町村が独自に行う助成金
基本情報
- 特定不妊治療の残りの自己負担学に対して
- 一般不妊治療に対して
例1)品川区の場合
- 名称: 一般不妊治療費助成事業
- 申請条件: 夫婦のいずれかが検査・治療開始日から申請日まで品川区に住民登録されていること
- 対象治療: 検査・治療開始日から1年の間に受けた、医師が必要と認めた不妊の検査、タイミング法・薬物療法・人工授精などの一般不妊治療にかかかる医療費
- 助成上限: 5万円・1回限り
- 所得制限: なし
- 申請期限: 検査・治療開始日から起算して1年以内
- 申請方法: 所定の助成申請書(第1号様式)および一般不妊治療・検査受診等証明書(第2号様式-1・2)の両方を健康課へ提出
- 名称: 特定不妊治療費助成事業
- 申請条件: 夫婦のいずれかが検査・治療開始日から申請日まで品川区に住民登録されていること
- 対象者: 東京都特定不妊治療費助成事業の承認決定を1年以内に受けていること
- 助成金額: 50,000円(治療A,B,D,E,男性不妊治療)、25,000円(治療C,F)
- 助成期限: 東京都の特定不妊治療費助成事業の承認決定の日から1年以内
- 申請窓口: 品川区健康課の窓口
※当然の事ながら、これは品川区の制度なので、品川区民に対する制度です。
例2)和歌山県の市町村の場合
- 名称: 一般不妊治療費助成事業
- 実施主体: 和歌山県内の各市町村
- 申請条件: 夫または妻のいずれか一方、あるいは両者が 和歌山県内に1年以上住民登録していること。(申請時点で)
- 対象治療: タイミング療法、薬物治療、手術治療、人工授精などの一般不妊治療にかかかる医療費
- 助成上限: 1年度あたり3万円
- 助成期間: 2年度連続
- 所得制限: 夫婦の 所得の合計額が730万円未満
- 申請期限: 治療の受けた日の属する年度の3月末までに申請
- 申請方法: 所定の助成申請書、証明書、領収書など(詳細はホームページへ)
※当然の事ながら、これは和歌山県の制度なので、県民に対する制度です。
支払いシミュレーション
仮に