【不妊治療費】不妊治療に掛かる費用の実質負担額を下げたい人は必見!助成制度の内容とは?

不妊治療に掛かる治療費の一部は、都道府県・区市町村から助成されることをご存知ですか?

本記事では、助成金の種類と申請方法、申請の条件について解説します。

 

不妊症を疑っている人、不妊症と診断された人たちにとって、不妊治療の費用は気がかりな点だと思います。不妊治療が長期化すると、治療費支出も大きく膨らんできます。中には、治療費負担が重過ぎて治療を断念する方や、そもそも治療をスタートできない人、先延ばしにしている人もいると思います。

本記事では、不妊治療費用に対する国・地方自治体からの助成金と、その対象者、仕組みについて紹介したいと思います。

 

治療の種類

不妊治療と言っても実は、大きく2つに分けることができます。
  • 一般不妊治療: 例)不妊の検査、タイミング法・薬物療法・人工授精
  • 特定不妊治療: 例)顕微授精、体外受精

公的助成事業の種類

不妊治療費用に対する公的な助成金は2つのタイプに分類することができます。
  1. 国の事業に基づく都道府県の助成金
  2. 区市町村が独自に行う上乗せ助成金
それぞれの助成金の詳細を以下に紹介します。

助成金の種類と全体のイメージ

助成金には様々な種類が、それぞれが適用される治療にも制限があります。
そこで主要な助成金がどのようなものか、その一例を簡単に図化して示したいと思います。
約100万円の治療を支払ったのちに、そのうち40万円を助成金として受け取ったことを示します。
不妊治療助成金のイメージ
上の図が示す例は、体外受精を1回行う一般的な夫婦を想定した例です。
体外受精は、自由診療である特定不妊治療なので治療費が高くなります(右側の棒グラフ)。そして当然ながら、体外受精を行う場合でも、検査などの一般不妊治療も行います(左側の棒グラフ)。
①の助成金は、”特定不妊治療”に対して適用されます。
②の助成金は、主として”一般不妊治療”に対して適用されますが、中には特定不妊治療の残りの自己負担額に対して助成を行う区市町村もあります。

注意!

実際の不妊治療では、
”特定不妊治療”を行わない場合も考えられますし、2回以上の”特定不妊治療”を行う場合や、他の治療と組み合わせて治療する場合など、様々なケースが考えられます。
そのため、どれくらいの助成金を受け取ることができるかは、治療内容や住んでいる場所などによって様々です。具体的に「いくらもらえるか?」は下記の内容をご覧ください。

①国の事業に基づく都道府県の助成金

基本情報

まず国の事業の内容を以下の通り示します。

 

細かいことですが、助成金を出す側(国と自治体)の負担割合は国が50%、都道府県・指定都市・中核市が50%のようです。

助成を受けるための条件

助成を受けることができる人にはいくつかの満たすべき条件があります。

下記の3つ全てを満たす必要があります。(国の事業

 

条件1治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
条件2特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に判断された法律上の婚姻をしている夫婦であること
条件3夫婦の総所得が730万円まで(夫婦合算の所得ベース)

注意!

各都道府県の予算規模や方針によって、これらの条件を緩和する自治体もあります。
(例えば、東京都の場合、平成31年4月以降に治療を開始した人は、夫婦の総所得が905万円未満の夫婦まで助成対象となります。)

年間所得の計算方法

「夫婦の年間所得合算額が730万円未満」かどうかについては、自分たちで計算して確かめることができます。
ここで言う年間所得とは、”夫婦の手取り年収の合算額”です。
額面年収の目安は約900万円以下の人が対象となりますので、ギリギリかなと思う人は、以下の手順で具体的に計算する必要があります。
まず、「いつの年間所得なのか?」についてですが、助成金の申請月によって以下の通りとなります。
  • 1〜5月に申請:  前々年の夫婦の所得
  • 6〜12月に申請: 前年の夫婦の所得
そして、具体的な年間所得は、源泉徴収票などを使って自分で計算できます。

計算式

夫もしくは妻の計算(一人分)
年間所得額 = 総所得額(*1) ー 80,000(一律) ー 諸控除(*2)
(*1)年間所得額: 収入金額から税法上の必要経費を引いた額
        例: 源泉徴収票 →給与所得控除後の金額
           確定申告書A →第一表の所得金額の合計金額
           確定申告書B →第一表の所得金額の合計金額+第三表の所得金額から株式等の譲渡を除いた金額
           住民税課税証明書 →前年所得の合計金額
(*2)確定申告や源泉徴収票等で確認ができるものに限る(例:雑損控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除、障害者控除、寡婦控除、勤労学生控除など)

計算式

夫婦の総所得額 = 年間所得額(夫) + 年間所得額(妻)
→夫婦の総所得額が730万円未満であれば、都道府県の不妊治療助成金を申請できます。

年間所得の具体例

東京都のホームページの例を参考に紹介します。
例)源泉徴収票が以下のような場合
源泉徴収票の例

計算例

所得額 = 所得金額の合計額-80,000円(一律)-諸控除
3,714,800円 = 4,064,800円-80,000円-270,000円
※この場合、本人がその他の障害者に該当するため、諸控除が270,000円となる。
仮に夫婦双方の所得が上の例と同じである場合を考えたときに、夫婦の総所得額は
夫婦の総所得額 = 3,714,800 × 2 = 7,429,600円
となります。
→この例の場合、夫婦の総所得が730万円以上となり、所得条件を満たさないので、申請はできません。ただし東京都の場合、平成31年4月以降に治療を開始した人は、夫婦の総所得が905万円未満まで助成対象となっているので、この計算結果でも助成金の申請ができます

治療の種類と助成金額

助成金額は、治療種類ごとに異なり、また治療回数によって変わってきます。(国の事業
治療ステージ/治療内容

特定不妊治療

※ 男性不妊治療

A新鮮胚移植を実施 15万円

(初回30万円)

 15万円

(初回30万円)

B凍結胚移植を実施 15万円

(初回30万円)

 15万円

(初回30万円)

C以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施 7.5万円 非該当
D体調不良等により移植のめどが立たず治療終了 15万円

(初回30万円)

 15万円

(初回30万円)

E受精できず、又は、胚の分割停止、変性、多精子授精などの異常授精等により中止 15万円

(初回30万円)

 15万円

(初回30万円)

F採卵したが卵が得られない、又は状態のよい卵が得られないため中止 7.5万円 15万円

(初回30万円)

G卵胞が発育しない、又は排卵終了のため中止 対象外 対象外
H採卵準備中、体調不良等により治療中止 対象外 対象外

注意!

助成金額についても、上の表の助成金額に上乗せで助成を行っている都道府県があります。
例えば、一部の都道府県を抜粋して、国の助成金と都道府県独自の上乗せ助成金を合計すると以下のようになります。
治療ステージ東京都和歌山県
A20万円(初回30万円)25万円(初回30万円)
B25万円(初回30万円)25万円(初回30万円)
C7.5万円12.5万円
D15万円(初回30万円)25万円(初回30万円)
E15万円(初回30万円)25万円(初回30万円)
F7.5万円12.5万円

治療回数の定義

助成金は「治療1回あたり○○万円」と表記されていますが、ここで言う治療1回とは、「どこからどこまで」の治療のことを指すのでしょうか?

1回の治療とは

1回の治療とは、採卵の準備から始まり、最終的にその治療周期の妊娠判定検査までの一連の治療のことを指します。

例えば、
採卵準備→ 採卵→ (採精)→ 体外受精→ (胚凍結)胚移植→ 妊娠確認検査

ただし、医師の判断によりやむを得ず中止した場合は治療終了となり、中止までの治療を1回の治療ととらえます。

申請期限

申請には期限があるので「自治体が決めた期限内」に申請する必要があります。
「自治体が決めた期限内」の例として、
  • 治療終了日から(治療終了日を含めて)60日以内
  • 治療が終了(1回の治療のこと)した日の属する年度内(4月1日から3月31日まで)
など自治体によって異なるので、詳細はお住まいの自治体の情報を確認してみてください。

申請方法

まず、以下の書類を用意します。
  • 申請書: 各自治体もしくは治療を受けた医療機関でもらえる
  • 受診等証明書: 治療を受けた指定医療機関でもらえる
  • 領収書コピー: 治療費(保険外)の領収書のコピー
  • 住民票: 夫と妻の住民票
  • 戸籍謄本
  • 口座情報: 口座番号や支店名、通帳の写しなど
これらを持って、市役所などの窓口に行って申請書等を提出します。

助成限度回数

また、助成を受けることができる回数にも年齢によって制限があります。

初めて助成を受けた際の治療期間初日の妻の年齢通算助成回数
40歳以上3回
40歳未満6回
平成27以前に助成を受けたことがある人※要確認
より具体的には、厚生労働省の資料を参照してください。

②区市町村が独自に行う助成金

基本情報

特定不妊治療である体外受精や顕微授精については、保険がきかないので治療費が高額になります。①で紹介した「国の事業に基づく都道府県の助成金」は治療費の軽減に有効ですが、それでも、特定不妊治療費は高額であるため、自己負担額は依然として高額のままです。
そこで、各区市町村は、さらなる負担軽減を目的として独自の助成金制度を設けている場合があります。
これも大きく分けると2種類あります。
  • 特定不妊治療の残りの自己負担学に対して
  • 一般不妊治療に対して
一般不妊治療は一般的に、保険がきく治療が多いため、特定不妊治療ほど高額ではありませんが、通院回数や治療年月が長引くと高額化し、これも家計にとって大きな負担となります。
この助成金制度がない区市町村もあるので、気になる方は、みなさんがお住まいの区市町村のホームページを調べてみてください。

例1)品川区の場合

品川区”は、「一般不妊治療」にも「特定不妊治療」にも、上乗せの制度を有する区です。
《一般不妊治療》
  • 名称: 一般不妊治療費助成事業
  • 申請条件: 夫婦のいずれかが検査・治療開始日から申請日まで品川区に住民登録されていること
  • 対象治療: 検査・治療開始日から1年の間に受けた、医師が必要と認めた不妊の検査、タイミング法・薬物療法・人工授精などの一般不妊治療にかかかる医療費
  • 助成上限: 5万円・1回限り
  • 所得制限: なし
  • 申請期限: 検査・治療開始日から起算して1年以内
  • 申請方法: 所定の助成申請書(第1号様式)および一般不妊治療・検査受診等証明書(第2号様式-1・2)の両方を健康課へ提出
《特定不妊治療》
  • 名称: 特定不妊治療費助成事業
  • 申請条件: 夫婦のいずれかが検査・治療開始日から申請日まで品川区に住民登録されていること
  • 対象者: 東京都特定不妊治療費助成事業の承認決定を1年以内に受けていること
  • 助成金額: 50,000円(治療A,B,D,E,男性不妊治療)、25,000円(治療C,F)
  • 助成期限: 東京都の特定不妊治療費助成事業の承認決定の日から1年以内
  • 申請窓口: 品川区健康課の窓口
※上記以外にも条件があるので、該当する人は確認してみてください。

※当然の事ながら、これは品川区の制度なので、品川区民に対する制度です。

例2)和歌山県の市町村の場合

和歌山県内の市町村”は、「一般不妊治療」に対する助成制度を有する市町村です。
  • 名称: 一般不妊治療費助成事業
  • 実施主体: 和歌山県内の各市町村
  • 申請条件: 夫または妻のいずれか一方、あるいは両者が 和歌山県内に1年以上住民登録していること。(申請時点で)
  • 対象治療: タイミング療法、薬物治療、手術治療、人工授精などの一般不妊治療にかかかる医療費
  • 助成上限: 1年度あたり3万円
  • 助成期間: 2年度連続
  • 所得制限: 夫婦の 所得の合計額が730万円未満
  • 申請期限: 治療の受けた日の属する年度の3月末までに申請
  • 申請方法: 所定の助成申請書、証明書、領収書など(詳細はホームページへ)
※上記以外にも条件があるので、該当する人は確認してみてください。

※当然の事ながら、これは和歌山県の制度なので、県民に対する制度です。

支払いシミュレーション

上記の助成金制度を基に、どれほどの助成金受け取りを期待できるのかシミュレーションしてみました。

仮に

ある夫婦が、1年間に2度の体外受精治療を受けて、妊娠に至ったとした場合を考える。
内容は、凍結胚移植(治療ステージB)を2回。
妊娠確認までに支払った治療費の総額は、

 



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